鞆の浦観光で最も人気の高いスポットのひとつ『福禅寺 対潮楼』。1711年、鞆の浦に立ち寄った朝鮮通信使の李邦彦(イ パンオン)は、客殿として使われていた『福禅寺』からの景色を「日東第一形勝」、つまり“日本で一番美しい景勝地”と讃えました。朱塗りの弁天堂が建つ弁天島と、その背後に悠然と横たわる仙酔島。悠久の時を経て今もなお多くの人々の心を揺さぶる絶景を、ぜひ時間をかけて味わってください。


日当第一形勝と称された瀬戸内の多島美

鞆の浦の景観の美しさを語る上で欠かすことのできない場所、それが『福禅寺 対潮楼』です。渡船場の向かい側に見える美しい石垣。その高台の上に悠々と佇んでいます。
平安時代に空也上人によって建立されたとされ、1711年に鞆の浦に立ち寄った朝鮮通信使の李邦彦(イ パンオン)は、『福禅寺』の客殿からの景色を「日東第一形勝」と讃えました。1748年には朝鮮通信使の洪景海(ホンケヒ)が、瀬戸内を眺望する座敷を『対潮楼』と名付け今に至ります。

受付スタッフの方に導かれるまま、畳の上に座ってみると……窓枠を額縁に見立てた見事な景色が広がります。「江戸から対馬までの間で最も美しい景勝地」と称されたのも納得。朱塗りの弁天堂が建つ弁天島や悠然と横たわる仙酔島など、瀬戸内の多島美が目に映ります。島の周囲を時折船が行き交い、しばし時間を忘れて見惚れてしまいます。

季節や時間によっても趣が変わってさぞ素敵だろう、そう思ってスタッフの方に聞いてみました。「一番キレイな季節や時間はいつですか?」。すると、「毎日おるけど、いつまでも見飽きんよ。西日が差す夕方もえぇし、雨の日だってキレイなもんよ」とのお答え。毎日ここで働く人が言うのだからきっとそうなのでしょう。季節を変え、時間を変えて、また訪れたい。心からそう思いました。

鞆の浦の絶景を眼前に写経体験

景色を見るだけでもじゅうぶん満足なのですが、ここでは写経体験ができるとのこと。写経道場と名付けられた専用の部屋があり、「日東第一形勝」を目の前に眺めながら、般若心経の写経体験ができます。
ひと文字ずつ心を込めて書いては、景色を眺めてひと休み。なんとも贅沢なひと時に心が浄化されていくような気分です。

『福禅寺 対潮楼』には、朝鮮通信使の資料や、坂本龍馬率いる海援隊の蒸気船いろは丸の関連資料など見どころが満載。本堂では、海上安全と安産信仰を集めたご本尊・千手観音を拝観ことができます。
ご本尊の千手観音は長い間、本堂の厨子の中で秘仏として安置されていたもの。隠れキリシタンのマリア観音など珍しい仏像もあるので、隅々までじっくりご覧ください。


福禅寺 対潮楼
住所/広島県福福山市鞆町鞆2
電話/084-982-2705
営業時間/8:00〜17:00
定休日/無休
入館料/大人200円 中高生150円 小学生100円
写経体験/1,000円