卸専門の鮮魚店『鮮魚 衣笠』の衣笠睦生さんが鞆町内の4ヵ所で実施している鮮魚の移動販売。鮮魚だけでなく、お刺身や焼き魚などすぐに食べられるよう加工した商品も販売されています。スーパーのない鞆の浦では、高齢者の生活を支えるマーケットとしての役割を果たしています。
高齢者の暮らしを支える鮮魚の移動販売
木曜日の朝の鞆中央公園。ひとり、ふたりとおばちゃんたちが現れ、ベンチに座って井戸端会議が始まりました。みんなが心待ちにしているのは、鮮魚移動販売。おばちゃんたちに混ざっておしゃべりに花を咲かせていると……ん? 遠くから音楽が聴こえてきました。段々と大きくなる大江戸捜査網のテーマに合わせて、ド派手な橙色の軽トラックが登場! 営んでいるのは、卸専門の鮮魚店『鮮魚衣笠』の衣笠睦生さんです。
睦生さんの祖父の代から続く『衣笠』はホテルや旅館、飲食店に鮮魚を卸している専門店ですが、町で唯一のスーパーマーケットが閉店したのを機に移動販売をスタート。月曜日は平地区にある「鞆の津ふれあいサロン」。火曜日は「鞆中学校」下の集合団地。木曜日は「鞆中央公園」。金曜日は「鞆御幸市営住宅前」の公園。鞆町内の4ヵ所で朝10時から行っています。
飾らない人柄が魅力の“むっちゃん”に会いたくて
「むっちゃん、今日は何があるん?」
「この前はありがとね」
「むっちゃん、私が頼んどったあれは買うて来てくれた?」
みんなが口々に話し掛け、トラックの周りが華やぎます。“むっちゃん”と呼ばれる睦生さんは、おばちゃんたちのアイドルみたい。みんながどれほどこの移動販売を心待ちにしているのかが分かります。
みんな口が達者で、なんだか漫才みたいで面白い。
買い物が困難になった高齢者の暮らしを支える。とても重要で重大な使命のようにも思えますが、「自分にできることを、できる範囲でやりょうるだけですよ」と、睦生さんはとっても自然体。気負わず、気取らず、マイペースな睦生さんのスタイルは、この町の空気感そのものです。
「おばちゃん、コレ試食してみ」「ゆっくりでえぇけぇ、気をつけて帰ってよ」そんな何気ないやりとりが微笑ましくて、“むっちゃん”に会いたくて訪れるおばちゃんたちの気持ち、とってもよく分かる!
基本的に地元住民向けの商品ラインアップですが、お刺身や焼き魚などすぐに食べられるよう加工した商品も並んでいます。旅の途中、おばちゃんたちに混ざってローカル気分で買い物を楽しむのもオススメです。公園のベンチや防波堤など青空の下で新鮮な刺身をパクリと味わうのも乙なものです。
鮮魚 衣笠(魚介の移動販売)
住所/曜日により異なる
電話/090-7500-9970
出店日時/月・火・木・金曜日10:00〜11:30(売り切れ次第終了)