20近いお寺が点在する鞆の浦では、写経や坐禅といった修行体験ができるお寺も少なくありません。そこで、『正法寺』の坐禅会と『顕政寺』の観心行をご紹介。「お寺で修行」と聞くと、厳しそうとかまえてしまうかもしれませんが、どちらもが優しくレクチャーしてくれるから初めてでも安心して参加できます。せっかく鞆の浦を訪れるなら、忙しい日常を忘れて自分と向き合う時間を過ごすのも良いものです。


神社仏閣巡りにはもってこいの町、鞆の浦

小さな町の中に、20近いお寺が点在する鞆の浦。特に町の北側には、『備後安国寺』『正法寺』『慈徳院』『顕政寺』『妙蓮寺』など各宗派のお寺が密集し、沼名前神社の山道参道へとつながっています。これは、江戸時代初期に鞆城を築いた福島正則が、城下町整備の一環として鞆城を外敵から守るために寺町筋を造営したことがきっかけとか。小さな範囲にこれほどの数が密集している地域は珍しく、神社仏閣巡りにはもってこいの町なのです。

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凛と静まる朝の正法寺で坐禅会

『正法寺(しょうぼうじ)』で月に一度開催されている坐禅会。もともとは夏休みに近所の子どもたちを集めて始まったため、誰でも気軽に参加できるのが魅力。
体をほぐしたら、約20分間にわたって坐禅を体験。凛と冴えた朝の空気、そして鳥のさえずりや木の葉の揺れる音が心地よく感じられます。緊張で慣れない私に住職の栗原正雄さんが優しく語ってくれました。

「急に無心になれといっても難しいもの。いろんなことに想いを巡らせても良いのです。楽しいこと、嬉しいことを思い起こしてみてください。自然と感謝の心が生まれてくるでしょう?」。
「坐禅をするとき眼は半眼にします。私はこれを、半分は自分自身を見つめ、もう半分は社会を見つめるととらえてくださいと伝えています」。

「○○しないと!」そんなポーズにとらわれて、本当に大切なものを見失ってしまうのは日常生活でも同じ。ただ静かに自分と向き合う時間が、心と体をリフレッシュさせてくれたような気がしました。

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坐禅の後は、禅の作法に従ってお粥をいただきます。お寺の澄み切った空気の中でいただくお粥は、なんともいえない美味しさ! 「早起きして良かった」と清々しい気持ちで1日をスタートできそうです。

正法寺(しょうぼうじ)
住所/広島県福山市鞆町後地1008
電話/084-982-3106
【坐禅会】
日時/毎月第4土曜日7:00〜8:30頃 ※変更の場合あり
参加料/無料 ※大人数の場合は要予約
http://www.shoubouji.net


築300年を超える顕政寺の本堂で観心行

晴れやかな笑顔と気さくな人柄が魅力的な副住職の鈴木省我さんが温かく迎え入れてくれた『顕政寺(けんしょうじ)』。ここで体験できる「観心行」は、日蓮大聖人の教えに導かれ鈴木さんが考案したオリジナルの修行です。
始める前にまず、と言って見せてくれたのは、キレイなビー玉がたくさん入った瓶。「人の心はこのビー玉のようにいろんな想いがたくさん詰まっています。それがビー玉のようにキレイな想いなら心もキレイでいられるけれど、誰しもそうはいられません。ビー玉を一粒ずつ取り出すように、日常の中であった良かったこと、悪かったことを思い返してみてください」。そう言いながら観心行が始まりました。


鈴木さんのお経に耳を澄まし、太鼓の音に合わせて自分の心と向き合います。心に溜まったビー玉をひとつずつ取り出してみては、感謝したり、後悔したり様々な想いを馳せていく。

約10分間の観心行が終わると、ふと心が軽くなっているのに気づきます。日常の小さな幸せや喜びが、自分の心にはたくさん詰まっていたことを改めて実感。
「良かったことは改めて感謝し、良くなかったことは反省する。そうして心を整理すれば、また新たに良いこと、キレイなことが入ってくるから」と、鈴木さんはそう教えてくれました。

鈴木さんの気さくな人柄に魅せられ、いつまでもおしゃべりしていたい気分。「朝起きて、命をいただくことに感謝しながら食事をする。毎日を何気なく暮らすことが実はとっても難しい。でも人生はずっと続くのだから、ありのままを生きることが一番大切」。言葉のひとつひとつが空気のようにスーッと染み込み、心がまっすぐ素直に整えられたような気がします。いつかまた悩んだり迷ったらこの人に会いに来よう。そう思えるような出会いにまたひとつ感謝しました。

顕政寺(けんしょうじ)
住所/広島県福山市鞆町後地1205
電話/084-982-3069
【観心行】
日時/事前に要問い合わせ
参加料/お気持ち