鞆の浦の町を歩いていると、玄関先に小さなしめ縄のような輪が下げられているのを見ることがあります。これは「茅の輪(ちのわ)」といわれる厄除けのお守りです。
「茅の輪」とは、茅(ちがや)で編まれた輪のこと。
毎年6月30日の「夏越の祓え(なごしのはらえ)」の日、各地の神社では人がくぐれるくらいの大きな輪に編まれた茅の輪をくぐる、「茅の輪くぐり」という祓えの行事が行われます。鞆の浦でも沼名前神社の祇園宮で茅の輪くぐりの神事があります。
この日に神社の参道に置かれた茅の輪をくぐると罪や穢れ、災厄や疫病を祓い清められるといわれており、毎年多くの参拝客が訪れます。
詞を唱えながら8の字を描くようにぐるぐると茅の輪をくぐり抜け、罪穢れを祓い清めます。
茅の輪くぐりの始まりは奈良時代の「風土記」から。蘇民将来(そみんしょうらい)という貧しい若者に宿を借りたスサノオの神が、「後の世に疫病がはやったら、蘇民将来の子孫だといって、茅の輪を腰に着ければ免れるであろう」と告げたという伝説がもととなっています。奈良時代の古記が現代も大切に受け継がれているのです。
ちなみに、鞆住民の玄関先に飾っている茅の輪は、この神事で使われた大きな茅の輪をほどき、町民に配って編み直したもの。
神事に使われたものが一般住民に再分配されるとは、なかなかの大盤振る舞い。
暮らしと歴史がすぐ隣り合わせにある、鞆の浦ならではの温かさを感じます。
茅の輪くぐり
会場/沼名前神社
住所/福山市鞆町後地1225
日時/毎年6月30日17:00~
電話/084-982-2050(沼名前神社)