「ねーろた、ねろた」の囃子言葉がかかると、烏帽子(えぼし)に素襖(すおう)姿の弓主は約28m先にある標的をきっと見据え、弓を引く。
刺すように冷たい冬の空気の中で、片肌脱いだ弓主の姿が勇ましい祭礼です。

「お弓神事」は新年の平穏を祈る破魔弓が変化した行事で、『沼名前神社』の境内にある『八幡神社』の例祭です。旧暦1月7日(現在は2月第2日曜日)に行われており、1971年には福山市無形民俗文化財に指定されました。
過ぎた一年の悪鬼を祓い、一年の平穏無事を祈る矢は、“甲、乙なし”という意味の文字が墨書された的に向かって放たれます。

祭りの当番は、鞆町内の旧7ヵ町が輪番で務めます。当番町の若者の中で年長者が親弓主に、年少者が子弓主に選ばれます。また小姓(こしょう)2人は小学生、矢取り2人は幼児が務めます。まだまだ幼い子どもが矢取りを任せられることもあり、背中に背負った大きな銅鈴を鳴らしながら歩く可愛らしい姿も毎年の楽しみの一つ。
旧正月を祝う、鞆の浦の真冬の風物詩です。


お弓神事
会場/沼名前神社
住所/福山市鞆町後地1225
日時/毎年2月第2日曜日14:00~
電話/084-982-2050(沼名前神社)