万葉の時代から続く歴史や古い町並み、町中に点在する神社仏閣、瀬戸内海を望む絶景など鞆の浦には見所がたくさんあります。しかし、本当にこの町が魅力的なのは、今なお変わらない“暮らし”がそこにあること。江戸時代の建物では360年以上の歴史を持つ保命酒が今も醸造され、常夜燈の周りではご近所さんが井戸端会議。漁師たちは海へ出て、そこかしこに魚の干物が揺れています。歴史的な町並みと瀬戸内の風光明媚な景色が溶け合う中に、港町らしい人々の暮らしが息づく鞆の浦。のたりのたりと繰り返されるその飾らない日常が、何気ない毎日の中にある幸せに気づかせてくれるかもしれません。


町かどに点在するおかあさんの魚売り

鞆の浦の町かどや防波堤には、魚屋さんがいくつもあります。魚屋さんといっても店舗があるわけではなく、リヤカーに魚を並べただけの小さな露店。朝、漁師さんが捕ってきた魚がそのまま並ぶので、鮮度が高くスーパーより手頃な場合も。ぜひ、地元の方に混ざって買い物を楽しんでみてください。天気の悪い日や風の強い日、漁が休みになれば魚屋さんもお休みです。

潮風に揺れてキラキラ輝く魚の天日干し

海辺にずらりと並ぶ、魚の天日干し。特に冬場は最盛期を迎えるサヨリのカーテンが出現します。潮風に揺れてキラキラと輝く姿は、思わず見惚れてしまうほど。デベラ(タマガンゾウビラメ)、ゲンチョウ(舌平目の一種)、タコが揺れていることもあり、これぞ港町といった風情です。

鞆っ子の温かみあふれる人柄とユニークな方言

路地を歩けば「こんにちは」と当たり前のように挨拶が交わされる鞆の浦。住民同士がすれ違い様に声を掛け合う姿はほほえましく、見ているこちらまで笑顔になってしまいます。「どっから来ちゃったん?」「気をつけて行きないよ」など観光客に声を掛けてくれることも。『常夜燈(じょうやとう)』の周りや弁天島を望む防波堤の上で繰り広げられる井戸端会議に参加してみてください。歴史にまつわるエピソードや地元民しか知らない絶景スポットを教えてもらえるかもしれません。

広島弁、備後弁など方言が特徴的な地域の中でも特にユニークな方言が残る鞆の浦。「はよ行きない!」「気をつけて帰んない」など「○○しない」というセリフをよく耳にします。否定語のように聞こえるかもしれませんが、これは「○○しなさいよ」という意味。ちょっとお節介で温かい鞆っ子の気性を象徴していると思いませんか? 年配のおじちゃんたちが口にするのが「わしら“ちんぐう”じゃけぇの〜」という言葉。これは幼馴染や親友を表す方言で、おそらく韓国語の「チング(親しい友人)」と同様の意味。朝鮮との交流の名残が日常の中に自然とあるのが面白いですね。

鞆の浦の漁師 – 瀬戸内の海の幸を届け、未来に繋ぐヒーロー

ローカル感満載! 町人に愛される鮮魚の移動販売 – 鮮魚 衣笠

まちに溶け込み高齢者を支える「鞆の浦・さくらホーム」