「も~す、もうす、お礼をもうす」

今年も鞆の新春の風物詩「お弓神事」が無事に終わりました。

冷たい空気と凛とした緊迫感の中にも、あちらこちらで鞆の人々の温かさが伝わってくるこの祭礼は、どの場面もまるで絵巻物を見ているようでした。

新しい年もきっといい一年になりますね! 町中が“福”でいっぱいになりました!!

囃子言葉の掛け声も鞆ならでの温かさが伝わってきます。これから始まる神事の前には「もーす、もうす、お弓をもうす」、八幡神社の献杯式では「よーのめ(飲め)よーのめ」と聞こえてきます。弓をひく親弓主を応援する際は「ねーろた、ねろた、親弓がねろた」、弓主が片肌を出す際には「あーぬく(温かい)、あーぬく」といい、神事が無事に済むと「もーす、もうす、お礼をもうす」と言います。どれも穏やかでゆっくりとした囃子言葉は人々の心を温め、この祭事を盛り立てます。

本番前日、弓主の二人は俗世間から離れるという意味も込めて自宅でなく別の場所(当番町の会館等)に身を移し飾り弓と御神酒を枕元に置き就寝、明日の神事に備えます。その年の一年を神様扱いにされる名誉を担う役割でもあるのです。

見事に儀式化された前日祭と当日祭の二日間にわたる「お弓神事」は、日本遺産に認定された鞆の浦の構成文化財の一つであり、福山市無形民俗文化財でもあります。